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芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto  © 2021 Takatoshi Goto

塚も動けわが泣く声は秋の風

つかもうごけわがなくこゑはあきのかぜ

 

 元禄2年(1689)7月22日、加賀・金沢での作。芭蕉は、倶利伽羅が谷の古戦場跡を経て7月15日に金沢城下に入っている。

 ちなみに、その谷は倶利伽羅峠の南斜面にあり、寿永2年(1183)、木曾義仲が火牛の計で平家の大軍を打ち負かしたところだが、その義仲も寿永3年(1184年)1月6日に近江の粟津(現・滋賀県大津市)で討ち死にし短い一生を終えている。義仲贔屓だった芭蕉にとっては感慨深い場所であったことだろう。

 さて、金沢で芭蕉が待ち望んでいたのは、小杉一生という門人との出会いであった。彼は、茶商を営みながら俳諧を嗜み、貞門、談林の門を経てやがて芭蕉に傾倒することになる。芭蕉も江戸で一生のことを聞き及んでいたらしい。しかし、前年の11月、36歳で他界していたことを芭蕉は金沢で知り驚愕する。一笑は、芭蕉の訪問を心待ちにしながら無念のうちに死んでいったという。

 掲句は、ちょうど、7月22日に一生の追善供養が催された願念寺で詠まれたものである。蘇ってくれとばかりに慟哭する芭蕉の声は、折から吹き付ける秋風と共鳴して、天地さえも塚を鳴動させんばかりの悲しみに満ちている。俳諧という一縷の縁が時空を超えて魂と魂を結びつける強い絆を紡ぎ出す力となることを再認識させられる。一生の辞世は「心から雪うつくしや西の雲」。芭蕉に見せたかった美しい雪の金沢を眺めながら、西方浄土も象徴する「西の雲」に来迎した弥陀に導かれていったのであろう。

 

季語 : 秋の風(秋) 出典 : 『おくのほそ道』

 

Move the grave mound
my weeping voice resonates
with the autumn wind

 

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金沢