2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧
病葉を降らす大樹に歩み寄る 大峯あきら夜の茅の輪たつたひとりを待つてをり 浦川聡子水草生ふ職ある時もなき時も 涼野海音月の出の風鈴じつとしてをりぬ 黛執おくれ来し人のまとひし落花かな 山本洋子
竹皮を脱ぎ黒点を目指すかな夕焼を堕ちてしまひし夕陽かな丑三つの厨のバナナ曲るなり葱を抜く大浦天主堂の裏夏潮を流れてをりぬ沖の川
魚僧と化し毒流し諭しけり 小川軽舟炎暑なり白き巨船は死の如く 奥坂まや蟻強しこゑもことばも持たぬゆゑ 柳克弘紫陽花に空缶が乗つかつてゐる 加藤静夫
風招き風に崩るる白蓮 黒田杏子青田風わが細胞の潤ひに 鈴木牛後薔薇園に集まつてくる山の霧 田正子祭笛潮入の川底が見え 岩田由美読みかけてすぐやすみけり花は葉に 中岡毅雄スサノオの灯に浮かぶ宵宮かな 五十嵐秀彦大樹から風の湧き出す子どもの日 三島…
朝に聴き夕べに歌へり柿落葉 中西夕紀髪洗ふ今日着る服を紺と決め 星野佐紀震災日無言のままに春の昼 大木満里
風鈴の音風鈴が消しあひぬ 高橋将夫噴水の天辺に侏儒遊びゐる 水野恒彦齋田に水を張りたる風の波 雨村敏子
死に至る病といふ書明け易し 有馬朗人天空を抱いて朝露転がれる 浅井愼平夕焼に舌を飛ばしてカメレオン 中村和弘大夏木蜜蜂の巣を蔵したり 大串章大海に水母は夢の数ふやす 上田日差子鶏頭にとどこほりゐる時間かな 髙柳克弘 俳句四季 2014年 09月号 [雑誌]…
遠声の水になるまで?時雨耳鳴りも海鳴りも脱ぎ蟲の世へ 水鳥の和音に還る手毬唄
石穿つ滝純白の華となる 木暮陶句郎水無月の風を満たして橅の窓 同鳥海山の風を背負うて田草取る 相庭洋造
餌を得たる緋鯉へ水の盛り上がる 花谷清明日へつづく今を大事に漬ける茄子 花谷和子火星近しざわめきはじむ蝌蚪の池 河井末子
下萌えぬ人間それに従ひぬ 星野立子美しき緑走れり夏料理 同蓮咲いて水の月日の始まれり 星野椿蜩と蜩つなぐ山の風 同傾きし日を抱きたる大瀑布 星野高士立秋や机の上に何もなし 同
鈴蘭の香も包まれて届きけり 稲畑汀子葉ざくらや櫓音をりをり遠ざかる 大木さつき湖中にも天心のあり春の月 八百惠子
風邪薬溺れる苔の匂ひかな 花尻万博わだつみの母郷つらつら椿かな 恩田侑布子松籟を夜伽のころと思いけり 曾根毅もの書く手宇宙の奥に秋灯 冨田拓也芹なずな遊び呆けて土になろ 池田澄子菜の花や涙の鳥のウクライナ 大井恒行石を彫る音くぐもれり春の雨 堺谷…
ひぐらしの広島長崎そして福島 金子兜太心理療法は終り菜の花ほの暗し 安西篤みずうみに水あつまれる朧かな 塩野谷仁青葉木菟谷に灯らぬ家蔵す 武田伸一すいかずら泣きべそ天女降りて来し 山中葛子恋猫の声と星座と混み合うよ 月野ぽぽな石鹸に春のくぼみや…
冬毛なびかす猿 金色の仏手に乗り呪文混えの花びら 蛇神の舌に散る髪洗う 左右に太陽振り分けて
開帳や登れば下りるしかあらず 山﨑十生身に余るものは手放し滴れり 鈴木紀子
筍食ってる今が懐かしい 松井国央草を刈る意志を離れて次も刈る 同惑星をひとついじくる暑さかな 山本敏倖
上げ潮や更けて膨くるる踊の輪 岩淵喜代子踊の輪のときに解かれて海匂ふ 同水盤に水を満たして留守居かな 同
誰が杖の先より湧きし泉かな 嶋田麻紀どくだみを抜くほの暗きものを抽く 同じやがいもの花へ波打つ夕日かな 山﨑百花
夕風やはや花野めく犬走り 朝妻力田水沸く息継ぐごとき雲湧きて 土肥屯蕪里雲に入る中仙道や朴の花 中野智子
五月の空親友になるどすんとなる 宮崎斗士植田百枚水をこぼさぬ水の星 中村晋わたくしごと引っかけておく夏木立 芹沢愛子濃紫陽花通りすがりの鼻炎です 岡村知昭夏座敷微かな磁場の遺影かな 斎藤しじみ
野遊のやがて本気となりにけ 澤田和弥春の田に囲まれてゐる墓場あり 同花冷や切手の縁のぎざぎざも 金子敦砂糖壺より春愁のこぼれけり 同
いただきを城の座となし朝ぐもり 島田牙城東より朝焼の家康が来る 同十薬や関節ごとの昼の星 男波弘志梅雨ふたり同じ長さの煙草吸ふ 上田信治炎天やぶつけるための荷を背負ふ 中山奈々夜空また剥がれてかわほりとなりぬ 月野ぽぽな夕立の端がめくれているら…
額縁に明治天皇春の風邪 寺澤一雄春満月少年は首締めあへり 遠山陽子よく晴れてまだ日当たらぬあ朝桜 谷雅子傘ごしに見ゆる雨つぶ桐の花 佐藤文香啓蟄や月のまはりに雲ゆたか 越智友亮
蛍光灯並ぶ天井梅雨に入る 小川軽舟一睡に乗越して花吹雪きをり 奥坂まや蛍火や心臓に血がさらさらと 竹岡一郎五月雨や紫煙澱める地下のバア 髙柳克弘
山国の闇夜をかけてちる桜 澤好摩夕日照る稲佐の浜の岩座に 同筍と筍の距離晴れわたる 橋本七尾子春愁や三角定規に穴ひとつ 味元昭次大暑へとひとの口より烟出て 山田耕司雲海に触れるべくしてシャツ開く 今泉康弘
きしみつつ行くモノレール花曇高速は分岐点へと雲の峰ホスピスに光の満ちて秋澄めり
梅雨夕焼眇目をすれば見えるもの 高野ムツオ倒伏の麦あをあをと空残る 大場鬼怒多本願寺畳のヘリを蟻戻る 栗林浩六月の空の暗さの変電所 佐藤成之ほととぎす人の死すとき水こだま 渡辺誠一郎
樹に向かつて歩き出して汗拭く 福島小蕾半獣半人こころ弱くて朧もとむ 同凉しくて身のがらんどに臍ひとつ 同
