林桂・句集『遠近紀行』ウエップ
自づから陽差しに集ひ花返る 林 桂
陽の中に出て行く径や野紺菊 同
蹲るやうに若松林なり 同
蓬生の闇を育てて日暮かな 同
朝顔に深々と射す宇宙かな 同
長崎の空の色なる海の色 同
金魚玉に虹色現れし夕日かな 同
寒昴未来に追ひつくことなくて 同
枯れてゆく明るさにゐる水の神 同
噴水の輝くところから崩る 同
潮風の届かぬ陸や夏椿 同
かなかなの風に落ちたる水の音 同
天上に散る花のある睡さかな 同
図書館の噴水雨に濡れてゐる 同
蟬の穴より月光の漏れ出づる 同
林桂『遠近紀行』

高山れおな・句集『百題稽古』現代短歌社
千年の影引く影や姫小松 高山れおな
さわらびや何を握りて永き日を 同
玉苗のふるへたふとし水は空 同
地球より溢れ荒川雪の夜を 同
昭和百年源氏千年初鏡 同
我が狐火も霜夜は遊べ狐火と 同
息白き別れは星の匂ひかな 同
時の日の湖光りつつ眠る 同
挽歌降るべし雲雀ほど高きより 同

福本啓介・句集『保健室登校』文學の森
吃音のあとの静寂に小鳥来る 福本啓介
月朧抱きしめられてゐたりけり 同
昼月と共に過ごせり保健室 同
小春日の昨日に我を置いて来し 同
さくら咲き記憶喪失終はりけり 同

「対岸」2025年2月号
障子貼りゐていつの間に囲まれし 今瀬剛一
冬の星糸で繋いで贈らむか 同
瀧凍り始める寒さかと思ふ 同
ショール巻いて母が見えなくなりしかな 同
やがて会ふはずの枯野の二人なり 同
瀧深く隠して山の眠るなり 今瀬一博
鮟鱇の腹の白さよ雪催 同
目瞑れば吾も大柚冬至風呂

大木あまり・句集『山猫座』ふらんす堂
ペンギンの胸の広さや春隣 大木あまり
霜の花忘るるために歩きけり 同
鎌倉の水羊羹と無常観 同
マスクして逢ふや双子座流星群 同
立ち泳ぎするかに揚羽飛ぶことよ 同
入院も旅と思へば冬うらら 同

大屋達治・句集『大屋達治集』(俳人協会)
くらい水すきとほらせる花火かな 大屋達治
藺草慶子・句集『雪日』ふらんす堂
山上の雲の厚さや田水張る 藺草慶子
水底のかくも明るく冴返る 同
水渡り来し一蝶や冬隣 同
片雲の遠く光りて夏きざす 同
光陰のなだれ落ちたるさくらかな 同






