2025-01-01から1年間の記事一覧
自づから陽差しに集ひ花返る 林 桂 陽の中に出て行く径や野紺菊 同 蹲るやうに若松林なり 同 蓬生の闇を育てて日暮かな 同 朝顔に深々と射す宇宙かな 同 長崎の空の色なる海の色 同 金魚玉に虹色現れし夕日かな 同 寒昴未来に追ひつくことなくて 同 枯れてゆ…
千年の影引く影や姫小松 高山れおな さわらびや何を握りて永き日を 同 玉苗のふるへたふとし水は空 同 地球より溢れ荒川雪の夜を 同 昭和百年源氏千年初鏡 同 我が狐火も霜夜は遊べ狐火と 同 息白き別れは星の匂ひかな 同 時の日の湖光りつつ眠る 同 挽歌降…
鎌倉の人の涼しき胡坐かな 林誠司 母の日や遠くまあるく土星の輪 同 江の島へ向かつて水を打ちにけり 同 人は座し水はいそげり春の山 同 わたつみへ雲かぶせたり富士の秋 同
吃音のあとの静寂に小鳥来る 福本啓介 月朧抱きしめられてゐたりけり 同 昼月と共に過ごせり保健室 同 小春日の昨日に我を置いて来し 同 さくら咲き記憶喪失終はりけり 同
また回り出す年越の換気扇 高野ムツオ 無辺へと千手を垂らし菊枯れる 同 不立文字風に渦巻く落葉こそ 同 天の狼咆哮雪が降り出せり 同 冬の蝿昨日の朝日今日も浴び 同 終末に備え固まる黒海鼠 渡辺誠一郎 数え日や終わらぬ旅の旅衣 同 産声を忘れ宣戦布告かな…
障子貼りゐていつの間に囲まれし 今瀬剛一 冬の星糸で繋いで贈らむか 同 瀧凍り始める寒さかと思ふ 同 ショール巻いて母が見えなくなりしかな 同 やがて会ふはずの枯野の二人なり 同 瀧深く隠して山の眠るなり 今瀬一博 鮟鱇の腹の白さよ雪催 同 目瞑れば吾…
ペンギンの胸の広さや春隣 大木あまり 霜の花忘るるために歩きけり 同 鎌倉の水羊羹と無常観 同 マスクして逢ふや双子座流星群 同 立ち泳ぎするかに揚羽飛ぶことよ 同 入院も旅と思へば冬うらら 同
くらい水すきとほらせる花火かな 大屋達治 大年の街の音聞く橋のうへ 同 大山に脚をかけたる竈馬かな 同 海に出てしばらく浮かぶ春の川 同 泳ぎより立つとき腕を翼とす 同 日蓮が妙と叫びし初日かな 同 捨てし田を豊葦原へ還しけり 同
