2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧
さるをきくひとすてごにあきのかぜいかに 貞享元年(1684)の秋、富士川のほとりに哀れげに泣く捨子を見つけての吟。古来より猿の声に腸を断つ思いをするといった詩歌が多く、「猿を聞く人」とは、そうした猿の声に感傷的風流を詠む詩人のことであり、そのよ…
のざらしをこころにかぜのしむみかな 貞享元年(1684)8月の作。『甲子吟行』(別名『野ざらし紀行』は、掲句に因む)の旅へ向かう門出の句。天和の大火によって深川の芭蕉庵は類焼し、甲州に避難していた芭蕉は、この前年の冬、門人・山口素堂らの支援によ…
ならななへしちだうがらんやえざくら 貞享元年(1684)の作(推定)。まず「奈良七重」という上五は、奈良のnaと七重のnaが頭韻を踏みながら、七代の天皇が帝都とした奈良の古い歴史に思いが致されている。次の「七堂伽藍」は成句であり、南都六宗では、金堂…
よにふるもさらにそうぎのやどりかな 天和元〜2年(1681-1682)頃の作。「手づから雨のわび笠をはりて」(『虚栗』)と前書きがある。宗祇の「世にふるも更に時雨のやどりかな」をもじった句だが、宗祇の句もまた、二条院讃岐の「世にふるは苦しきをものを槙…
あさがほにわれはめしくふおとこかな 天和2年(1682)の作。「和角蓼蛍句(角が蓼蛍の句に和す)」と前書きがあり、宝井其角の「草の戸に我は蓼くふ蛍哉」に対して唱和したものである。其角は、「蓼食う虫も好き好き」という諺を踏まえて、わび住まいながら…
ばせうのわきしてたらひにあめをきくよかな 延宝9年(1681)秋、深川芭蕉庵での作。前書きに「茅舎ノ感」(『武蔵曲』)あるいは、「老杜茅舎破風の歌あり、坡翁ふたゝび此句を侘て屋漏の句作る。」(『禹柳伊勢紀行』)とある。 芭蕉の草庵には、同年春に門…
くもをねにふじはすぎなりのしげりかな 延宝4年(1676)の夏、伊賀に帰郷した途次の作とされている。雲居に突き出した富士の頂上を杉の天辺に、下雲を根に見立てた句。富士山の孤高が際だってうまく表現されている。もちろん、頂上に杉は生えていないが、そ…
くもとへだつともかやかりのいきわかれ 寛文12年(1672)の作か。『芭蕉翁全傳』には「東武に赴く時友達の許へ留別」とあり、故郷の伊賀上野を離れて江戸へと向かう際、友人に贈った別れの句である。芭蕉は、十代後半、藤堂藩伊賀付士大将・藤堂新七郎良精の…
蝶の骨顔にかくして山河とす 高岡修 斧の柄を春の日射しが来て握る 同 ほどかれて風船自由を見失なう 同 凍滝のなか月光の氷りたる 同
朽ち果てし舟を根方に藪椿 黛執 奥つ城に隣れる田より打ちはじむ 同 枯山の枯れの極みに水の音 同 星よりも水のきらめく聖夜かな 同 春がきて日暮が好きになりにけり 同
ぜんまいの月の中まで伸びあがる 野中亮介 風船の捕まえたがるやうに飛ぶ 同 春の月桶をあふれて天にあり 同 銀漢の尾に触れて鳴るオルゴール 同
戦場に繋がる海や野分雲 朝吹英和 靴下の穴に始まる大枯野 同 年輪の声聞く霜の夜更けかな 同 音階の行きどまりにて鶴凍つる 同 光陰の矢に刺し抜かる晩夏かな 同
てのひらをこぼるる刻よ冬すみれ 野﨑憲子 石を積むこと息をすること涼し 月野ぽぽな 空缶に闇のはげしき修司の忌 小西瞬夏
海のみか空もまた菜の花の沖 林亮 あるはずの後ろをなくす帚草 同 コスモスへ風の都の遷る見ゆ 同 鉄橋の数だけ渡る天の川 同 枯菊に燃ゆる音燃え移る音 同
野遊につゝじを掘つて来りけり 平松いとゞ 酷寒の瘴癘の地の孰れとも 同
陽炎や大気の底に住み古りて 山内繭彦 その先の湖の明るさ麦の秋 同 吹かれゐて敗荷風を弄ぶ 同
