2015-01-01から1年間の記事一覧
ガジュマルの神老いたるか木下闇 長谷川櫂 鏡餅光ははるか宇宙より 同 龍の目の動くがごとく春の水 同 八月や空に峠のあるごとく 同 一頭の鮭を虚空に吊るしけり 同
石船に石の宙吊り雲の峰 山内美代子 高波の光よせくる石鼎忌 同 舟渡す綱のびきつて山眠る 同 相寄りて螢火二つ共に消ゆ 同
審査員 : 榎本了壱、能町みね子、壇蜜、竹中直人
昼寝して人間といふ大自然 長谷川櫂 『芭蕉の風雅 - あるいは虚と実について-』は、「虚に居て実をおこなふ」という蕉風の本質を見直して、現代俳句の在り方を問う好著。現代俳人必読の書と思う。
鷹を見しより大空の入れ替る 稲畑汀子 原爆の忌に水色の水を飲む 坊城俊樹 山の端に夕づつ茅花流しかな 今村征一
体温計振つて冷ましぬ萩の花 小川軽舟 深き淵へ降りゆくごとし桃を喰む 奥坂まや 新幹線キーンと通る墓洗ふ 柳克弘
栗の花少年は脛に傷を持つ 今村潤子 噴水の臣り逸れて落ちにけり 永田満徳
秋の日の音楽室に水の層 安西篤 月を吊る宙の大きな手が見えて 宮坂静生 土まんじゆう夏の花咲く土を乗せ 坊城俊樹 黄落や少年が少女に待たれ 石田郷子 コスモスの写真に指のうつりたる 鴇田智哉 水底のやうな聖夜の街とほる 坂本宮尾 寒禽の思ひきるときか…
星座みな傾き出でて十二月 鷹羽狩行 狼とわれをへだてて雨の柵 宇多喜代子 だいこんをおろすなんだかさびしいね 姜東 石屋根の石の押さへや雪しまく 寺田敬子 和御魂荒御魂へとしぐれけり 林誠司 詩ごころにはかにからす瓜の花 今村征一 芋の茎きしみて育つ…
廃屋の噴井純白の老猫 黒田杏子 水買ひに出て白南風の石畳 田正子 もの言はぬひと日を得たる五月かな 三島広志 鍵盤のつめたかりける蝶の昼 中岡毅雄 近江路の大地膨らむ麦の秋 清水憲一
成人の日の歯ブラシの突つ立てる 小川軽舟 月あげて闇うづくまる春の山 同 鳴つてゐる電話が見えて昼寝覚 同 露の世の稗田阿礼の記憶力 同 人間が人形に見ゆ冬の雨 同
エレベーター尼僧と昇る金魚鉢 前川弘明 からむしやこの風筋に亡妻在りぬ 野田信章 とびとびの唐黍の実の戦後かな 瀬川泰之 「拓」第50号観感・・・五島高資
父からのピカソの壺や夏立ちぬ 岡田史乃 六月のヒステリー球暴発す 同 人は皆何を急ぐか夕焼雲 辻村麻乃
日溜りの彼方に日ありやれはちす 生駒大祐 墓参砂の火星を懐かしむ 関悦史 夜道コーヒー持つてもらつて紐むすぶ 佐藤文香 肩に乗るだれかの顎や豊の秋 山田耕司 君の後ろをさしすせ空飛ぶ法王は 高山れおな 日の差して海胆むらさきの歩みかな 上田信治
露台濡れをり鉄色の日本海 木暮陶句郎 海の紺透かし夾竹桃の風 同 また地球強く叩いて西瓜割 同
戦争と月下に楊貴妃桜かな 澤好摩 眼を伏せて捨てるものあり海峡晴 橋本七尾子 鯉のぼり封筒は開けられて果つ 山田耕司 「俳壇の革新児健在—伊丹三樹彦」・・・栗林浩 「連衆」平成27年2月号の巻頭言(五島高資)を取り上げて頂きました。深謝。
風薫るとはいつまでもこの世なる 小川軽舟 星高しキャンプの子どもすぐ眠り 同 硝子戸に指紋くつきり原爆忌 奥坂まや 瓢簞の幼きくびれ葉がかくす 岩永志保 夏草に影して友の来たりけり 柳克弘
男性のトイレが開け山笑ふ 筑紫磐井 昇りつつ蔦の枯れゆく炎かな 五島高資 光こそ虚無なれ石充つる二日 関悦史 キュビズムの顔してをりぬ去年今年 望月士郎 地下鉄の潜り抜けきし春の土 小野裕三 飛行機の巨大な影や潮干狩 仲寒蟬 藤棚の下は黄泉への非常口 …
峡に住み蝮も蠍座も食べる 金子兜太 雨期でもいい五月は俺の母港だから 相原左義長 その鍵は月光館に置いてある 前川弘明 下の名で呼ばれ夏蚕のごとく反る 松本勇二 花こでまり寺子屋きっとこんな音 宮崎斗士 人間は人間を産み花は葉に マブソン青眼 ペリリ…
今月のハイライト「豈」創刊三十五周年 阿部貞に時雨花やぐ昭和かな 筑紫磐井 打水のそこより龍の背骨かな 五島高資 ******************************************************* 順番に叩く蟬の木夕暮れる 赤尾恵以 天に月地に星形の烏瓜 ささめやゆきの 手花…
雲巨大なりところ天啜る 金子兜太 海程秀句・金子兜太抄出 人体はみな岬かな鳥帰る 守谷茂泰 髭あたることも惜命花過ぎて 柳生正名 かがなべて落ち合う春の垂水かな 五島高資
流星海に呑まれてしまひけり 西川青女 春の潮地球を溢れ出でにけり 同 潮いたみ激しき佐渡の椿の実 同 初茜東支那海染めゆきぬ 同 分け入つて隼人の國の竹を伐る 同
春の水まだ息を止めておりにけり 曾根毅 桃の花までの逆立ち歩きかな 同 さくら狩り口の中まで暗くなり 同 初夏の海に身体を還しけり 同 爆心地アイスクリーム点点と 同 草いきれ鍵をなくした少年に 同 竹の秋地中に鏡眠りおり 同 時計屋に空蟬の留守つづき…
夏至の夜や輪廻断たんと漕ぐ鞦韆 有馬朗人 生きてきて粽を食べておりにけり 森下草城子 山清水ひかりとなりて苔に沁む 加藤耕子
ががんぼと兄弟なのだオレたちは 坪内稔典 めつむりてエレベーター待つ若葉寒 大牧広 引く波の紋を辿れば桜貝 西村和子
人形のもたれてゐたる金魚鉢 西原天気 六月や切手を舐めて雲を見て 同 つつがなく夕暮れが来て冷蔵庫 笠井亞子
近代俳句の詩学を俳句史を通して詳細に解析した好著と思いました。ここを踏まえてこそ現代俳句の更なる発展が期待されるのではないでしょうか。
肉片を返すがごとく畑打てり 島田牙城 神苑に思はぬ尿意柏散る 中村与謝男 白梅に蜂に寄りたる日和かな 天宮風牙 自転車が自転車を抜き日の永さ 佐藤文香 指全部はなれし苹果卓の上 男波弘志 雲が波うつて卒業前夜かな 中山奈々 野火を追い火の裏側へ来てし…
川と川出あひて濁る寒紅梅 澤好摩 こめかみに光集まるゆず湯かな 橋本七尾子 いきんでも羽根は出ぬなり潮干狩 山田耕司 つばくらめ雲のすき間に母の胸 今泉康弘
三人のくらしの中に蝶生まる 岡田耕治 時に点く電球のあり卒業式 同 花吹雪竜宮門を出てきたる 同 夏の星地下鉄に乗りつながらん 同 マシュマロの間に小さき春の闇 金子敦 ごきぶりを入れて視界といふがあり 杉山久子
