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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。© 2021 Takatoshi Goto

2016-01-01から1年間の記事一覧

小川軽舟『俳句と暮らす』中公新書

金盥傾け干すや白木槿 小川軽舟 鶏頭や洗濯物の袖雫 同 レタス買へば毎朝レタスわが四月 同 平凡な言葉かがやくはこべかな 同 死ぬときは箸置くやうに草の花 同 家に居る芭蕉したしき野分かな 同 一年の未来ぶあつし初暦 同

高野ムツオ『片翅』邑書林

みちのくや蛇口ひねれば天の川 高野ムツオ 死者二万餅は焼かれて脹れ出す 同 欠伸してこの世に戻る冬日和 同 日高見は片目片足片葉の蘆 同 罔象女とは銀杏の木凍空に 同

日野原重明『百歳からの俳句創め』富嶽出版

初御空我上り坂米寿越え 日野原重明 カンナの緋わがからだにぞもえるショパン 同 癌を病む若もの診たあと星仰ぐ 同 あやまちを犯した傷をゆるし合おう 同 さっそうと揺れるコスモス風のまゝ 同 滋賀の里琵琶湖にかかる虹の橋 同

「はがきハイク」第15号

曇天を大きな桃の実と思ふ 西原天気 あるだけの林檎をコインロッカーに 同 葡萄ひとふさ電線を見て過ごす 同 虫すだく8ポ活字の『草枕』 笠井亞子 蟋蟀の動悸激しき位牌の金 同 行列の先頭狙う鬼やんま 同

宗田安正『巨人』沖積社

この明るさ鯤の体内かもしれぬ 宗田安正 をらずともすでに来てをり蝸牛 同 砂浜掘る虹の欠片の出づるかと 同 古池に翁の魂を釣り上げし 同 顳顬というて霞に近きもの 同 昼寝より起ちて巨人として去れり 同

中原道夫『一夜劇』ふらんす堂

磨ぐまへの米の温さよ良寛忌 中原道夫 茫洋と春のみづうみ國土なす 同 にんげんに卒業あらばその後何 同 バックミラーの逃水に追はれたる 同 いくそたび標的を外せる稲光 同 對といふ船形石の涼しさよ 同 午前より午後のみじかし藪椿 同 山開き磁石に意志の…

今瀬剛一『水戸だより』ふらんす堂

風の電車は花野発花野行き 今瀬剛一 しつかりと見ておけと瀧凍りけり 同 大祖の家紋涼しき下がり藤 同 どつかりと父の笑顔と今年米 同 雁渡る母には杖のごとき鍬 同

「対岸」2016年10月号

咲き続けそのまま秋の薊なり 今瀬剛一 朴の花自己崩壊の途中なり 同 わき出づる汗いまだあり死なぬなり 同 猿田彦矛を杖とし炎天下 成井侃 梅雨の蝶雨の重さは知らぬなり 今瀬一博 帰省して平らに眠りゐたりけり 福井隆子 形代の揺り戻されて海近し 岡崎桂子…

「晨」平成28年9月号

橋越えて一つつき来る蛍かな 大峯あきら 水を打つ一番星をまなかひに 黛執 潮色の深き寒流リラの花 茨木和生 冷し馬海の向かうに陸見えて 浦川聡子 マチュピチュのペルーは遠し金魚草 菊田一平 蛍狩回送電車すぎゆけり 涼野海音 をりをりに月あらはるる蛍かな…

「小熊座」2016年8月号

春の月除染袋の山の端に 高野ムツオ 夏雲や牛の眼にある被曝以後 同 心臓はいかなる匂い片かげり 渡辺誠一郎 高原の星待つためのハンモック 栗林浩

「香天」2016年7月号

薄氷の音のしている光かな 岡田耕治 誰よりも早く着きたる春の水 同 城に居る時間の中の牡丹かな 同 親玉を捕まえているハンモック 同 見たことのない心を映し金魚玉 同

池田澄子『思ってます』ふらんす堂

菜の花や真夜の頭の中に揺れる 池田澄子 河骨や大人になり老人になり 同 火星より冥土近けれ飛ぶ柳絮 同 体内は他人事に似て花篝 同 椿から椿へ椿を褒めにゆく 同 電線の中を電気の去年今年 同

松下カロ『白鳥句集』深夜叢書社

白鳥にさはらむとして覺めにけり 松下カロ 鳥雲へシーツよぢれてありにけり 同 白鳥の心臓を雲よぎりたる 同

「火神」平成28年夏号

左義長や炎は芯に闇を抱く 今村潤子 年迎ふ表裏なき阿蘇の山 永田満徳 輝ける水汲みてをり復活祭 寺澤始 夕暮れを引き寄せてゐる花大根 橋口陽子

「藍生」平成28年6月号

早寝早起なみなみと新茶の香 黒田杏子 来年のことはさておき新茶汲む 同 土の粒かかげながらに芽立ちかな 岩田由美 禁煙をして香り増す沈丁花 高橋亜紀彦 春浅し髭剃に貸す化粧水 髙田正子 追儺会の豆に影ある畳かな 三島広志 水温むきらりと風の色めきて 清…

「ひろそ火」2016年6月号

菜の花の果てに海あり航路あり 木暮陶句郎 鳥交る空と森とをつなぎつつ 同 鳥の巣の穴は明るき闇である 同 バーテンに見せる春夜の猫目石 同 東北に地震のありし春の雪 茂木妃流 三従の道をめざして万愚節 佐藤志乃

髙柳克弘『寒林』ふらんす堂

木馬降りる足そろひけり夕桜 髙柳克弘 皆既日蝕ゼリーふるへてゐたりけり 同 夜も力抜かぬ鉄路よ去年今年 同 炎天やひよこ売る箱へなへなと 同 ぼーつとしてゐる女がブーツ履く間 同 太陽の照りつつ古ぶ手毬かな 同 バス発ちて寒き夜景に加われる 同 蚊遣火…

「鷹」平成28年6月号

草餅や城下といへど漁師町 小川軽舟 吉事呼ぶごとくに蝌蚪の揺るるかな 奥坂まや 日の波や寄居虫一つ引き残す 髙柳克弘 刀打つ鎚ひびかせよ引鶴へ 竹岡一郎 逃げたくて逃げだせなくて葱坊主 加藤静夫

「火神」平成28年春号

鏡ヶ池水の波紋にある秋愁 今村潤子 愚痴話西瓜の種の散らばりぬ 永田満徳 神鈴の紐の三つ編み雁渡し 三浦洋 海雲巻く少年の指ねぢれけり 寺澤始

塩野谷仁 他『現代俳句を探る』遊牧叢書Ⅱ

共著者の栗林浩氏よりご恵贈頂きました。また、拙文(連衆「巻頭言」)の一部も引用して頂き心より御礼申し上げます。

「海程」2016年6月号

山百合咲く弱気の虫よさようなら 金子兜太 地の黒き割れ目ついばみ春の鳥 安西篤 野火走る落日はまだ白きまま 塩野谷仁 青年は地より湧いたり山眠る 佃悦夫 裸木を濡らす大気の中にいる 堀之内長一 きさらぎや人は人殺めて次の世へ 瀬川泰之 フクロウの正眼…

片山由美子 著『昨日の花 今日の花』ふらんす堂

寒卵おのづからなる仄明り 片山由美子 春眠し夢に尾のあり香りあり 同 さざなみは風にもありて青葉の夜 同 落蟬の蹴られて幹に戻りけり 同 はや虫の声を聞く夜となりにけり 同 鉦たたき宇宙に果てのありとせば 同

「現代俳句」平成28年5月号

花万朶夜空の色の帯を解き 浦川聡子 眠りまで水位深めてゆくさくら 対馬康子 書きかけの手紙を通る春の月 同 着弾地黄蝶唯今交尾中 松井国央 左足また左足雪女 小西瞬夏 みささぎを浮かべて青田風となる 五島高資 (仲寒蟬・感銘十句抄)

「海程」2016年5月号

さくら咲くしんしんと咲く人間に 金子兜太 凧作りやる子が居なく卆寿かな 相原左義長 北極星入りしままの寒卵たまご 佃悦男 火の色のにんじん積まれ雪ふりくる 前川弘明 紅茶の神様のよう冬暖か 谷佳紀 遠耳の二人の阿吽冬朝日 野田信章 往く年や色も形も消…

「香天」2016年4月号

限りなくひとりになりし竜の玉 岡田耕治 高野山に帰る人ある寒気かな 同 白梅に来て耳鳴を取りもどす 同 コンピュータ開くと草の青みけり 同 閉校の近づいている桜かな 同 「ギャラリー」および「俳句鑑賞三六五」では、拙句をお取り上げ頂き心よりお礼申し…

「小熊座」2016年4月号

白鳥の声人の世の永からず 高野ムツオ 原子炉と眠れる億の虫の息 同 たましいは肉質にして黒海鼠 渡辺誠一郎 息白し星が生まれて消えるまで 宇井十間

「葦牙」平成28年4月号

雪深き飛驒の國より寒見舞 尾村勝彦 冬浪の白刃せまる地球岬 同 寒卵ニュートリノもすりぬける 十河宣洋 十河宣洋氏の「俳句散策(現代俳句鑑賞)」にて拙句を鑑賞して頂きました。心よりお礼申し上げます!!

「海程」2016年4月号

行雲流水螢訪う文殊の地 金子兜太 青空に茫茫と茫茫とわが枯木 同 紅梅を埋めし白雪無心かな 同 柳に風生死一人の世界にて 相原左義長 羊歯群落透明に透明に柵は 武田伸一 丘に乳房をあつめて春の来ていたり 前川弘明 少年ひとりで切傷愛す杏林 北原志満子

「鷹」平成28年4月号

かつ丼の蓋の雫や春浅き 小川軽舟 左手は闇を掴む手月冴ゆる 奥坂まや くりかへす鬱梟も苦しむか 柳克弘 はくれんが散るさやうならさやうなら 市川葉

「藍生」平成28年4月号

はるかよりきし花びらのかの世へと 黒田杏子 さまよふて櫻の國をかなしみて 同 禱る禱る歩く歩く花の國 同