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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。© 2021 Takatoshi Goto

2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

干野風来子・句集『夕映の北岳』本阿弥書店

小太郎の尾根震はせし当薬竜胆 干野風来子 十二天在せば胡桃のこぼれ沼 同 天狼星へ向かひレールの進みけり 同 戸隠山や雲のゆくへは蕎麦の花 同 月あかり葛の葉うらに遊びけり 同 米洗ふ背中に春の山ひとつ 同

榎本バソン了壱 著『つきはひがしに』かいぶつ書店

わが航海暗室の水を滑るかな 榎本バソン了壱 竹売りの竹に絡まる天の川 同 月と雲とまた上になり下になり 同 金福寺月はおぼろに東山 同

「海程」2015年5月号

洋上に硫黄島見ゆ骨の音も 金子兜太 歳を重ねて戦火まざまざ桜咲く 同 十一面より二面おそろし春彼岸 安西篤 ひざまずく山河ありけり冬の虹 武田伸一 少子高齢みずみずしきは芹なずな 瀬川泰之(海程秀句・金子兜太抄出) 凍蝶がゐてすぐそばの遠い場所 柳生…

「鷹」平成27年5月号

三月の海ひとりづつ影がある 小川軽舟 鶯の声撥ね上げて谿青し 同 雪解川くぐりし橋をかへりみず 同 銀紙の引つかかりをる蓬かな 同 青空は虚言ゆるさず氷面鏡 奥坂まや 風船の影振り切つて飛び立てり 加藤静夫 人の死に石を据ゑたる雲雀かな 柳克弘

「小熊座」平成27年5月号

凍星や盲腸線の終点に 高野ムツオ 人間の数だけ闇があり吹雪く 同 甌穴の小石もよかり又の世は 同 日高見の尾てい骨骶骨より蘖ゆる 土屋遊蛍 人間はものにすがりて春の月 渡辺誠一郎 春愁の炉心の底の潦 同 天からの力垂直花の冷 大場鬼怒多 星みがく係りが…

「火星」平成27年3月号

白樺の寄生(ほよ)の影ある雪間かな 山尾玉藻 息吐いて大きく吸うて冬の朝 杉浦典子 木の椅子を軋ませて立つクリスマス 浜口高子

「鷹」平成27年4月号

古雛地球回ればゆふぐれに 小川軽舟 高千穂や雲踏むごとく神楽舞ふ 奥坂まや 愛の日や昆虫館の毒虫と 柳克弘

「晨」平成27年3月号

この村の神の発ちたる日向かな 大峯あきら しばらくは水音に沿ふ去年今年 黛執 廻りゐる水車の月日鳥渡る 山内繭彦

「鷹」平成27年3月号

遊ぶ子を知らぬ砂場よ日脚伸ぶ 小川軽舟 枯すすき光芒乱れては整ふ 奥坂まや ソドムは滅び渋谷は栄え冬薔薇 柳克弘

「里」2015年3月号

ふはふはの土となりたる春の月 島田牙城 組み立てる前の虫籠散らばれり 男波弘志 クリスマスツリーの下をとほりけり 堀下翔 太陽をひとりにさせて枯木立 仲寒蟬

「香天」2015年3.4月号

生き返る音のしている寒の水 岡田耕治 大げんかして菜の花を渡りけり 同 朝まで点る電球悟朗逝く 同 湯船から溢れていたり春の星 同