息白きこと胸のうち明かさざる 稲畑汀子 湖の日向を置いて時雨れけり 岩正子 末枯れて風の迷路となる城址 福本正嚴

金柑の奥に一人が暮らしけり 岡田耕治 十二月光るゲームの中にいて 同 冬の月家の中までついてくる 同 悪人のここに射しくる初明り 同 裏白を折りては風に放ちけり 同 黒板は森林のいろ冬に入る 金子敦

葡萄の粒の一つ一つに灯を映し 高橋信之 少年の無口に答う葛の花 高橋正子 窓に響く祭太鼓のリズム聴く 高橋句美子 割れるよに秋天ひらくサーキット 安藤智久

歪みへ歩合わす石段敷紅葉 花谷清 富士の名の小さき山の粧えり 同 畳にふれる結び柳や香炊いて 花谷和子

猫柳にはほほけんとする心 稲畑汀子 霧去来山にも人の心にも 木暮陶句郎 灯り消し火を消し木枯を眠る 坊城俊樹 実柘榴の一粒ごとに戦後あり 今村征一

牛蒡引く夢の世ならば夢のままま 高橋将夫 石棺に手を触るるなと鵙のこゑ 水野恒彦 天辺に烏瓜聖天の真昼かな 雨村敏子

凩に角のありりたる六本木 岡田史乃 真夜中の烏良夜を分かちをり 辻村麻乃 少年の記憶に沈むボート漕ぐ 福地靖

スケボーの捩ぢり反しぬ秋の風 山尾玉藻 陵の鉄扉の匂ふ小春かな 同 糸口といふがどこかに枯蓮田 同 てのひらに受けひとはだの龍の玉 同 もういちど松に目をやり掃納 同 わが前をゆく蟷螂の振り向かず 涼野海音

この柿の冷えは昨夜の星の冷え 高野ムツオ 人間の世に隣して葱立てり 同 鼻水を垂らして我も荒脛巾 同 靺鞨の影ありありと寒落暉 渡辺誠一郎 星流る仮設の町は今もなお 佐藤成之

ダンベルを艮に置く十三夜 堺谷真人 去年消えし白曼珠沙華甦る 中井不二男 鳶職は水茄子ほどに弾けたる 湖内成一

土砂降りを燈る市電の揺れつ去る 澤好摩 蟷螂の卵とほくに阿弥陀仏 同 枝わかれして月の出を待つ欅 橋本七尾子 この道は樹海に到る春の色 同 目刺焼く銀漢のこの裏口の 山田耕司 おのがじし舐めきれざるも音の雪 同 − 同人アンケート「わが前衛三句」抄 − 橋…

大赤城舐めて朔旦冬至の陽 木暮陶句郎 湯たんぽの命と思ふ湯をそそぐ 同 失なひし刻を探しに冬の蝶 星野裕子 霙降る空の余力を使ひ切り 杉山加織

産土の落葉ここだくお正月 金子兜太 人の暮しに星屑散らす枯野かな 同 月見団子生死の区別無き世界 相原左義長 眇なる日なりし石榴高かりし 塩野谷仁 山の辺の道や赤き蛾ひとつ容れ 武田伸一 シリウスに見られ背骨を矯正す 松本勇二 冬蝶のごとくに頭痛去り…

海のある奈良がふるさと初明り 遠藤若狭男 風にすくはれ風を追ひ秋の蝶 秋本弘子 あらぬ方見て決戦の菊人形 大塚邑紅

犬の屍を小屋から出すに遠く雪山 島田牙城 独楽の軸ぶれて天狼星しづむ 仲寒蟬 小寒や砂鉄集むる棒磁石 天宮風牙 石段をいろはにほへと初御空 倉田有希 まばたきのそれも苹果となるだらう 男波弘志 からす飛ぶ一月の空の力かな 上田信治 たてがみを靡かせて…

諸家自選作品（主宰・代表の作品）に五島高資も入集しています。また、結社の現在に「俳句スクエア」の記事が掲載されています。

屯して今を昔にする芒 松井国央 またの世に知るひと多し花樗 高野公一 障子貼る胸のゆがみに霧吹いて 芳賀陽子 湯けむりの風にまかせる花すすき 植田いく子 吊り橋の向うの枯れに触れ帰る 山本敏倖 - 特別寄稿 -「現代俳句ネットワーク」 インターネット俳句…