2022-01-01から1年間の記事一覧
蕾んではひらく空あり夏つばめ 恩田侑布子 宙ゆらぐ前に帰らん夏の闇 同 山茶花や天の眞名井へ散りやまず 同 生れたての雲かづきては瀧めぐり 同 蝙蝠にしはくちやの夜の始まりぬ 同 月光をすべり落ちさう湯舟ごと 同 凧糸をひく張りつめし空を引く 同 富士…
青空のどこかが弛み梅香る 黛まどか 竹煮草いづくで憑きしひだる神 同 面より底ひの水の真澄かな 同 月光の浮かせてゐたる力石 同 滴れる山を重ねて高野山 同 ためらはず沈む夕日も秋水忌 同
日盛を座頭鯨の遠ざかる 中田美子 春眠の深きところに息をする 岡田由季 月上がるかすかに草の匂いして 小林かんな 凩やオリオンの股抜けてきし 仲田陽子
火星大接近山蟻畳這ふ 龍太一 人類の化石は未完天の川 同 言靈の辭典に宿る秋灯 同
掃除機を動かすまでの春うれひ 津髙里永子 春月と豆電球をつなぐ駅 同 枯蓮に水音敗者復活す 同
名をもらひ赤子も花の世の一人 髙柳克弘 寒卵世界はすでに終わつてゐる 同 どつさりと星ある夜の蛙かな 同
鶏頭花ざわざわ続く疫病かな 中内亮玄 秩父山系ゆっくり頷く春の野生 同 あらたまの光混み合う鶏舎かな 同
音楽やとほくにこほり見にゆけり 宮本香世乃 春の木が爛れて窓が開けてある 田島建一 逃水の向うが今の時刻かな 鴇田智哉 星のない土が耕されて眠る 福田若之
特別寄稿 芭蕉飛び込むー古池の句に込められた芭蕉のメッセージ 行方克巳
いつかつかう箱うつくしく春の家 こしのゆみこ 光る字を押すと湯の沸く雪夜かな 田島建一 心音をふたつ並べて月を待つ 月野ぽぽな 砲台にあぢさゐのありありとある 宮本佳世乃 茅の輪くぐる脱獄のよう 室田洋子 後輪のもたもたとして曼珠沙華 大石雄鬼 見返…
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣 朝顔や百たび訪はば母死なむ 同 死螢に照らしをかける螢かな 同
夜氣といふは花の匂ひや水明り 渡邊水巴 人間に火星近づく暑さかな 萩原朔太郎 青年鹿を愛せり嵐の斜面にて 金子兜太
死人花風を揺らして揺るるらし 有賀眞澄 秋扇少年打擲して開く 同 夜は反射朝はあまがみする反射 同
水に還る途中を枇杷の花咲けり 水野真由美 雲少しあふれて鬱金桜かな 同 夏野へとピアノを運び出す男 同
切株があり愚直の斧があり 佐藤鬼房 陰に生る麦尊けれ青山河 同 みちのくは底知れぬ国大熊生く 同
一九三八年一一月九日深夜 水晶の夜映寫機は碎けたか 堀田季何 戰爭と戰爭の閒の朧かな 同 日の本の中心や色變へぬ松 同
合歓の花どこまでもゆく舟に乗り 村松二本 月山を前に座りぬ露の玉 同 ゆきゆきてアジアの奥に月見かな 同
指を嗅ぐ少年蝶を放ちしか 谷口智行 裏返す死者へこの世の冬銀河 同 神ときに草をよそほふ冬の月 同
目の玉がUFOを呼ぶ鳥威し 上野犀行 ディランの詩もて平成の日記果つ 同 イマジンに始まるラジオ冬銀河 同
みはるかすはるのかすみはくはねども 中原道夫 兄事する石塊のありひきがへる 同 それまでのことこれからのこと落葉して 同
てのひらを一度上向け春耕す 岡田耕治 散る花の中を昇れる花のあり 同 天道虫声を立てずに笑いけり 同 よく空を飛べる形に羊歯飾る 同 落蝉やもう一度飛ぶ形して 同 どこまでも正解のない秋の空 同 てのひらを落ち着かせたる冬林檎 同 もう少し電車にいたい…
風を呼び風に従ひ凧上がる 永田満徳 薄氷の縁よりひかり溶けてゆく 同 大波に攫はるるごと昼寝かな 同 黙すまで聞き役となる涼しさよ 同 鶴の声天の一角占めにけり 同 天草のとろり暮れぬ濁り酒 同 年迎ふ裏表なき阿蘇の山 同 落葉踏む音に消えゆく我が身か…
