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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。© 2021 Takatoshi Goto

2022-01-01から1年間の記事一覧

恩田侑布子・句集『はだかむし』角川書店

蕾んではひらく空あり夏つばめ 恩田侑布子 宙ゆらぐ前に帰らん夏の闇 同 山茶花や天の眞名井へ散りやまず 同 生れたての雲かづきては瀧めぐり 同 蝙蝠にしはくちやの夜の始まりぬ 同 月光をすべり落ちさう湯舟ごと 同 凧糸をひく張りつめし空を引く 同 富士…

黛まどか・句集『北落師門』文學の森

青空のどこかが弛み梅香る 黛まどか 竹煮草いづくで憑きしひだる神 同 面より底ひの水の真澄かな 同 月光の浮かせてゐたる力石 同 滴れる山を重ねて高野山 同 ためらはず沈む夕日も秋水忌 同

俳誌「ユプシロン」No.4

日盛を座頭鯨の遠ざかる 中田美子 春眠の深きところに息をする 岡田由季 月上がるかすかに草の匂いして 小林かんな 凩やオリオンの股抜けてきし 仲田陽子

龍太一・句集『HIGH・QUALITY』飯塚書店

火星大接近山蟻畳這ふ 龍太一 人類の化石は未完天の川 同 言靈の辭典に宿る秋灯 同

津髙里永子・句集『寸法直し』東京四季出版

掃除機を動かすまでの春うれひ 津髙里永子 春月と豆電球をつなぐ駅 同 枯蓮に水音敗者復活す 同

向瀬美音 編『国際俳句歳時記[冬・新年]』ふらんす堂

髙柳克弘・句集『涼しき無』ふらんす堂

名をもらひ赤子も花の世の一人 髙柳克弘 寒卵世界はすでに終わつてゐる 同 どつさりと星ある夜の蛙かな 同

俳句結社誌「俳諧旅団 月鳴」第参号 狐尽出版

鶏頭花ざわざわ続く疫病かな 中内亮玄 秩父山系ゆっくり頷く春の野生 同 あらたまの光混み合う鶏舎かな 同

俳誌「オルガン」28号 2022 spring

音楽やとほくにこほり見にゆけり 宮本香世乃 春の木が爛れて窓が開けてある 田島建一 逃水の向うが今の時刻かな 鴇田智哉 星のない土が耕されて眠る 福田若之

俳誌「丘の風」第29号 三田俳句丘の会

特別寄稿 芭蕉飛び込むー古池の句に込められた芭蕉のメッセージ 行方克巳

俳句誌「豆の木」No.26

いつかつかう箱うつくしく春の家 こしのゆみこ 光る字を押すと湯の沸く雪夜かな 田島建一 心音をふたつ並べて月を待つ 月野ぽぽな 砲台にあぢさゐのありありとある 宮本佳世乃 茅の輪くぐる脱獄のよう 室田洋子 後輪のもたもたとして曼珠沙華 大石雄鬼 見返…

仁平勝 著『永田耕衣の百句』ふらんす堂

夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣 朝顔や百たび訪はば母死なむ 同 死螢に照らしをかける螢かな 同

近藤栄治 著『昭和俳句の挑戦者たち』創風社出版

林桂・俳句詞華集『鍾愛百人一句』

夜氣といふは花の匂ひや水明り 渡邊水巴 人間に火星近づく暑さかな 萩原朔太郎 青年鹿を愛せり嵐の斜面にて 金子兜太

有賀眞澄・句集『愛密集』虹蜺舎

死人花風を揺らして揺るるらし 有賀眞澄 秋扇少年打擲して開く 同 夜は反射朝はあまがみする反射 同

水野真由美・句集『草の罠』風の花冠文庫

水に還る途中を枇杷の花咲けり 水野真由美 雲少しあふれて鬱金桜かな 同 夏野へとピアノを運び出す男 同

渡辺誠一郎 著『佐藤鬼房の百句』ふらんす堂

切株があり愚直の斧があり 佐藤鬼房 陰に生る麦尊けれ青山河 同 みちのくは底知れぬ国大熊生く 同

堀田季何・句集『人類の午後』邑書林

一九三八年一一月九日深夜 水晶の夜映寫機は碎けたか 堀田季何 戰爭と戰爭の閒の朧かな 同 日の本の中心や色變へぬ松 同

村松二本・句集『月山』角川書店

合歓の花どこまでもゆく舟に乗り 村松二本 月山を前に座りぬ露の玉 同 ゆきゆきてアジアの奥に月見かな 同

谷口智行・句集『谷口智行集』俳人協会

指を嗅ぐ少年蝶を放ちしか 谷口智行 裏返す死者へこの世の冬銀河 同 神ときに草をよそほふ冬の月 同

髙野公一・評論集『芭蕉の天地「おくのほそ道」のその奥』朔出版

上野犀行・句集『イマジン』飯塚書店

目の玉がUFOを呼ぶ鳥威し 上野犀行 ディランの詩もて平成の日記果つ 同 イマジンに始まるラジオ冬銀河 同

中原道夫・句集『橋』書肆アルス

みはるかすはるのかすみはくはねども 中原道夫 兄事する石塊のありひきがへる 同 それまでのことこれからのこと落葉して 同

岡田耕治・句集『使命』現代俳句協会

てのひらを一度上向け春耕す 岡田耕治 散る花の中を昇れる花のあり 同 天道虫声を立てずに笑いけり 同 よく空を飛べる形に羊歯飾る 同 落蝉やもう一度飛ぶ形して 同 どこまでも正解のない秋の空 同 てのひらを落ち着かせたる冬林檎 同 もう少し電車にいたい…

永田満徳・句集『肥後の城』文學の森

風を呼び風に従ひ凧上がる 永田満徳 薄氷の縁よりひかり溶けてゆく 同 大波に攫はるるごと昼寝かな 同 黙すまで聞き役となる涼しさよ 同 鶴の声天の一角占めにけり 同 天草のとろり暮れぬ濁り酒 同 年迎ふ裏表なき阿蘇の山 同 落葉踏む音に消えゆく我が身か…