2024-01-01から1年間の記事一覧
薔薇咲くや抜歯のあとのあをぞらを 鈴木総史 とんばうや蝦夷にあをぞらあり余る 同 背広にも晩年のあり漱石忌 同 薬飲むみづのまばゆし風信子 同 実石榴や触れればくづれさうな家 同
山上の雲の厚さや田水張る 藺草慶子 水底のかくも明るく冴返る 同 水渡り来し一蝶や冬隣 同 片雲の遠く光りて夏きざす 同 光陰のなだれ落ちたるさくらかな 同
火柱の見えしと思ふ白雨かな 石田郷子 暗がりに人詰めてをる里祭 同 寄せ合へる椅子のまちまち天の川 同 冬林檎剝けば夕べの月の色 同 万の枝けぶらふバレンタインの日 同
にんげんの回転木馬さくら散る 増田まさみ 何処へも戻らぬひとよ冬花火 同 手花火の手の入れ代わるニルバーナ 同 空蝉にまだ陽の残る浅きゆめ 同 二つ折り厳禁とあり天の川 同
街灯は待針街がずれぬよう 月野ぽぽな 真水汲むように短夜のFM 同 松茸に太古の空の湿りあり 同 まだ人のかたちで桜見ています 同 太陽は遠くて近し芒原 同 手袋に旅立ちの指満たしけり 同
ころがしておけ冬瓜とこのオレと 坪内稔典 長崎に住もう枇杷咲く五、六日 同 リンゴにもオレにも秋の影ひとつ 同 ねじ花が最寄りの駅という日和 同 夕べにはすっかり晴れて栗ご飯 同
友情にイルカが跳ねる時を待つ 十文字潤 夕焼けが捨てた光に救われて 栗原知也 誰が夢を空へ紡ぎて五重塔 星野煌太
地平の目まだ半びらき真葛原 佐怒賀正美 乗るによき父の背いつか天の川 同 地球まだ知られぬ星か磯焚火 同 亀鳴くや天の沖には磁気嵐 同 くねりだす街の石みち鳥渡る 同 青嵐や骨のみで立つ電波塔 同
黒海は波高くして春遠し 田中信行 空白を控へめに埋め冬すみれ 同 夕立に打たれ心の解毒かな 同
覚悟なき死のおびただし核の冬 大井恒行覚めているほかは眠りぬ鈴の風 同ひかりなき光をあつめ枯れる草 同赤い椿 大地の母音として咲けり 同行方わからぬ光放てり手の林檎 同
春満月戦車渋滞していたり 中内亮玄 微笑みの凄まじきこと落椿 同 曼珠沙華火の骨組みに緩み無く 同
この星の春を盡すや又震ふ 高橋睦郞 踝に雲さやりつぐ川禊 同 變若水や有爲の奥山㝱深く 同 春惜む綾取りの橋壊しては 同 三界は火宅風宅三の酉 同 山や水有情無情や皆目覺む 同 高橋睦郞先生より句集『花や鳥』(ふらんす堂)を頂きました。先生には昔より…
菜種梅雨パレードにひつような橋 田島健一 山桜なにも言わずについてくる 同 人をさがしてと奉じてゐる遅日 鴇田智哉 菜の花の群れが空気を膨らます 同 つま先に春の闇から届く波 福田若之 ゆく春に折り目があれば分けやすい 同 ほんたうはつばきのなかにあ…
何度開けてもないものはない冷蔵庫 高橋亜紀彦 仙人掌の永き夢から醒めて赤 同 曼珠沙華汝もサイコパスかも知れず 同 白梅や詩人は生くるために書く 同 長き夜や使ひみちなき砂時計 同 出目金の泪に誰も気づかざる 同
月に住む時代それでも白子干 仲寒蟬 入口のとなりに出口牡丹園 同 息止めて水着売場を抜けにけり 同 バイナップルすら爆弾に見えてくる 同 出目金の赤は黒より不幸せ 同
雪もよい湯気のにおいのからだかな 越智友亮 気を抜くと雨粒こぼす春の空 同 噴水の水やわらかく水に消ゆ 同 駆け足や宇宙は秋の空の上 同 金木犀両手で握手して別る 同 数学をやめ台風を待っている 同 河童忌の鉄のにおいの掌よ 同 稲咲いて朝をくださる光…
わだつみの道の遠のく秋入日 加藤哲也 顔見世を出て風となる一と日かな 同 宵闇に紛れ込みたる夏館 同 新涼やロダンの肘のあたりより 同 大人にもこどもにも降る木の実かな 同 蠟梅や知覚過敏を憂ひつつ 同 菜の花や月光菩薩立ち上がり 同
ぶらんこの裏まで見せて跳びにけり 蜂谷一人 心太突いて夜空を滴らす 同 龍骨のかたちに日本南吹く 同 林檎むくまあるくほどけゆく時間 同 もう土へかへる桜でありしもの 同 蒼き灯の底を聖夜の魚となる 同 蛤の舌夕暮に触れてをり 同 馬跳びの最後冬夕焼と…
噛みてなほ七面鳥の皮の照り 佐藤文香 ぬかるみのあかるみを踏み友なりけり 同 にはとりのはぐれて一羽春の中 同 夏霧を鳥おりてきて馬となる 同 終の住処鉄扉に薔薇を這はせあり 同 こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに 同 音楽のあをく膨らむ熱帯夜 同
事切れてまだ虫籠のなかにいる 福田若之 手に木の葉てんごくにも俳句はあるよ 宮﨑凜々香 木犀の届いてゐたる自動ドア 宮本佳代乃 心地よく浮かぶ月かたむき沈む 田島健一 星あかり豆腐の壁にゆきあたる 鴇田智哉
髙野公一先生よりご著書を頂きました。お手紙では、拙著『芭蕉百句』への温かいご批評を賜り、重ねて心よりお礼申し上げます。先生は「芭蕉の天地」で、ドナルド・キーン賞優秀賞を受賞された碩学にして恐縮至極に存じます。いずれにしましても、現代にあっ…
冬の蝶まばゆき方へ飛びゆけり 橋本石火 鳶の輪の崩れて小春日和かな 同 父の空母の空あるなづな粥 同
卒業の丘からのぞむガスタンク 小林かんな 来た路を金魚とともに引き返す 同 にんじんの太くて書架にトルストイ 同 大人になってからの友達梅三分 仲田陽子 ピーマンの中へ本音を詰めておく 同 白鳥の遺伝子をもち自由なる 同 灰色の象の背に乗る朧月 中田美…
