ありがたやゆきをかをらすみなみだに
元禄2年(1689)6月4日、羽黒山での作。芭蕉は、前日の3日に修験道羽黒派の本山を訪れている。その南谷の別院に逗留し、翌4日に本坊にて別当代会覚阿闍梨に謁し、そこで厚遇を受ける。羽黒山は神仏習合の地で、仏教関連の建物や旧跡は、羽黒山神社のある所より低い谷間に多い。平将門の創建と伝わる国宝・羽黒山五重塔、御本坊跡、南谷別院跡も例外ではなく、周囲には古木が林立しており、初夏でも根雪が残る地勢をなしている。
掲句には、会覚阿闍梨に対する恩義は当然のことながら、素晴らしい環境に恵まれた有り難さが素直に表現されている。また、雪に漂う清気と芳しい青葉の風が醸し出す羽黒山ならではの景趣も彷彿される。さらには、「南薫」を連想させる「南谷」という地名によって絶妙な句境がもたらされたと言えよう。
季語 : 風薫る(夏) 出典 : 『おくのほそ道』
How grateful —
the snows are scented with sweet breeze
at Minami-dani

