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芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto  © 2021 Takatoshi Goto

涼しさやほの三か月の羽黒山

すずしさやほのみかづきのはぐろさん

 

 元禄2年(1689)6月5日、羽黒権現(現・出羽三山神社)に参詣した際の作。陽暦では7月21日にあたり、江戸では夏の暑さも本格的になり始める頃であるが、奥州では夜の涼しさが心地よい時季であったろう。空に浮かぶ三日月の陰の部分が羽黒山の「黒」とも共鳴し、この聖地で仰ぐ三日月の仄かな影に妙なる心地が掲句から覗える。中七と下五のh子音による頭韻も快い。

 ちょうど、この日の月齢は11日にあたり、やがて上弦の月を経て満月へと向かう三日月を芭蕉は眺めていたことになる。出羽三山神社の御由緒によれば、羽黒山では現世利益を、月山で死後の体験をして、湯殿山で新しい生命(いのち)をいただいて生まれ変わる、という類いまれな「三関三度(さんかんさんど)の霊山」として出羽三山が篤く信仰され、「羽黒派古修験道」の根本道場として「凝死体験・蘇り」をはたす山であることが特筆されている。折しもここで芭蕉が拝した三日月はまさにその象徴とも言えるだろう。「ほの」には、ほのぼのと明けゆく未来の兆しも感じられる。そろそろ『おくのほそ道』の旅も北限に近まると同時に、死を覚悟して臨んだ芭蕉俳諧修行も茲に極まり、これから確立される蕉風俳諧とその展開もまた掲句には秘められているように感じられる。ここに来て、『おくのほそ道』という紀行が、単なる「みちのく」行脚の旅行記ではなく、芭蕉俳諧人生そのものが投影された一大絵巻物として見えてくるのである。

 

季語 : 涼しさ(夏) 出典 : 『おくのほそ道』

 

How bracing —
a crescent moon floating
above Hagurosan

 

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三日月