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芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto  © 2021 Takatoshi Goto

むめがゝにのつと日の出る山路かな

むめがかにのつとひのでるやまじかな

 

 元禄7年(1694)正月頃の作。早暁、山道を登っていたところ、ちょうど昇ってくる朝日に遭遇したのである。折しも、側には梅が花を咲かせて良い香りを漂わせている。あたかもその芳香に誘われたかのように現れた日輪の場景に「のつと」という口語的なオノマトペによって悠然とした臨場感が巧みに醸し出されている。

 ちなみに、以前、気功を極めた老女が舞を舞ったところ、清らかな梅の香りが辺りに広がったということを聞いたことがある。それは天地との交流を介して発せられた氣による現象だったのかもしれない。それ思うと、掲句に詠まれたものは、単なる情景ではなく、芭蕉の詩魂と天地の交流による詩境と言えるだろう。つまり、それは、雅な梅と朝日が「のつと」という俗的な表現によって、雅俗を超克した「天地人」の交流が体現されたものと思われる。そこに晩年の芭蕉が志向した「軽み」の至境が存するのだと思う。

 余談であるが、芭蕉俳諧精神に心動かされて日本各地にその句碑が建てられている。私の郷里である五島列島にもまさに掲句が刻まれた句碑がある。それは江戸後期に五島・富江藩主の五島伊賀守運龍公が富江神社境内に建立したものである。当時、武士も船頭も一緒になって俳諧を楽しんだと伝えられている。もちろん、日本の西の果ての五島に芭蕉が訪れたことはないが、その俳諧精神は人々の心を介して時空を超え、日本中に広まったのである。たかが俳諧されど俳諧であり、その言葉の力はもとより、俳諧の芸術性に感受性を持つ日本人の文化的水準の高さには驚きを禁じ得ないものがある。

 

季語 : むめ(春) 出典 : 『炭俵』

 

Plum blossoms' fragrance
suddenly the sun comes out
on a mountain path

 

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梅と朝日