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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。© 2021 Takatoshi Goto

ものいへば唇寒し秋の風

ものいへばくちびるさむしあきのかぜ

 

 元禄4年(1691)年頃の作か。芭蕉は、元禄5年(1691)に新築された芭蕉庵に座右の銘として掲句を書き付けている。『芭蕉庵小文庫』では、「物いへば唇寒し穐の風」の前書として「座右之銘/人の短をいふ事なかれ/己が長をとく事なかれ」とある。

 言葉を発すれば、秋風が唇にしみて寒いという句意だが、前書を考慮すれば、もちろん、それだけではなく、他人の悪口を言えば心に毒だし、自慢話をすればおこがましいという自戒の念が込められている。いわゆる「口は禍いの門」あるいは「沈黙は金」ということも含まれていよう。いずれにしても、剛毅木訥の仁を重んじる芭蕉らしい句と言える。

 ちなみに、コロナ禍の現在では、人前でマスクを着けないで喋ると冷たく見られるということもふと脳裡を過ぎる。もっとも、掲句は、言論の自由が制限された事を揶揄するものと捉えられたこともあったりと、いろいろに意味深長である。時代を超えて人口に膾炙するのも、俳諧における要素の一つである諷諫の効能によるものだろう。

 

季語 : 秋の風(秋) 出典 : 『續蕉影餘韻』(『芭蕉庵小文庫』)

 

Opening my mouth,
I have cold lips
in the autumn wind

 

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