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芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳(漸次更新中) 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto

鎌倉を生て出けむ初鰹

かまくらをいきていでけむはつがつを

 

 元禄5年(1692)4月の作か。『徒然草』の第119段にも、鎌倉の海で獲れる鰹が賞されている。江戸時代になると、物資の運送も発達して鎌倉あたりの魚介は新鮮なまま江戸へ運ばれた。掲句には、鎌倉で水揚げされた初鰹が活きの良いまま、その日のうちに届けられて、それを味わう江戸っ子の自慢が察せられる。

 ただ、私は、それと同時に、鎌倉を脱出して渡宋しようとした右大臣実朝のことが思い浮かばれる。結局、実朝はそれに失敗して、その二年後、鶴岡八幡宮にて公暁に暗殺される。そののち、鎌倉幕府滅亡の際に、新田義貞に攻められて鎌倉で切腹した北条高時ら、あるいは、二階堂ヶ谷に幽閉されていた護良親王の壮絶な最期も思い合わされる。「鎌倉」とは、北と東西を切り立つ山に、南を海に、囲まれた天然の要害だが、それ故に、その狭い府中での抗争や死闘は激烈なイメージがつきまとう。そうした鎌倉の持つ死地の一面も、逆に「生きて出けむ」という措辞を際立たせているように感じられる。

 

季語 : 初鰹(夏) 出典 : 『葛の松原』

 

The season's first bonito
it must have been carried alive
out Kamakura

 

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