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芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳(漸次更新中) 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto

暑き日を海に入れたり最上川


あつきひをうみにいれたりもがみがは

 

 元禄2年(1689)6月14日、酒田での作。前日の13日、出羽三山を発った芭蕉は、鶴ヶ岡城下を経て、そこより再び最上川を舟で下って酒田へ向かった。酒田は、最上川の水運を介して紅花などの物産が集積する港町で、日本海に面しており、特に北前船によって、瀬戸内海を経由して、上方(大坂)、さらには江戸を結ぶ西廻り航路の要所として繁栄していた。さて、芭蕉が酒田に到着した頃はすでに夕刻となっていた。その日は旅籠に一泊し、翌日14日、酒井候の御殿医だった淵庵不玉邸(のちに蕉門に入る)に招かれた際に、掲句が詠まれた。

 おそらく、芭蕉は、前日の川下りで酒田の港あたりで、ちょうど日本海の彼方に夏の夕日が没する壮大な光景を目の当たりにしたのであろう。最上川はここで日本海に流れ込むが、その水流の力があたかも水平線に沈む夕日まで及んでいるように感じられたのであろう。「入れたり」と言い切ることによって、最上川の擬人化が強調された所以でもある。もっとも、「熱き」ではなく「暑き」であることから、掲句の「日」はこれまでの暑かった日々と取ることもできる。そうすると、夏の暑さによっていっそう促進された海水の蒸発がやがて雲となり内陸に雨を降らせるという水の大循環も想起されるが、いずれにしても、それらが相俟って、天然造化の偉大さが掲句に絶妙な詩的昇華をもたらしている。

 

季語 : 暑し(夏) 出典 : 『おくのほそ道』

 

The hot sun
taken into the sea
by Mogami River

 

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落暉