のみしらみうまのばりするまくらもと
元禄2年(1689)5月15日、芭蕉は尿前の関を越えて、新庄の堺田に至るが、あいにくの大雨にて山中の宿に二泊する。小さな集落ということもあり、ほぼ民家に近い宿だったのだろう。夜は蚤や虱に悩まされ、枕もとでは、馬が小便する音が聞こえる。そうした状況を自虐も込めて赤裸々に詠んだのが掲句であろう。
当時、大きな宿場以外で逗留する際は、民家を借りることも少なくなかった。鄙びた山中であればなおさらである。しかし、こうした難儀な体験も一句に詠めば、観念化されて諧謔という形でユーモアともなる。これも俳諧の一つの効用である。
ちなみに、江戸時代では、「尿」を「しと」と読むのは人の小便であり、動物の場合は「ばり」と読んだらいしい。特に馬の場合は、音的にも「ばり」という粗野な感じが相応しい。もっとも、「尿」の排泄は人畜に共通した不可欠な生理現象である。一見、「風雅の誠」とはかけ離れているように思われるが、「ばり」と読むことによって、かえって生命の根源に迫る言葉の力が感じられる。
季語 : 蚤(夏) 出典 : 『おくのほそ道』
Fleas and lice —
now a house is staling
by my pillow

