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芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳(漸次更新中) 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto

何の木の花とはしらず匂哉

なんのきのはなとはしらずにほひかな

 

 貞享5年(1688)2月の作。『笈の小文』には「伊勢山田」、『真蹟集覧』には「外宮に詣ける時」とそれぞれ前書があり、伊勢神宮参拝の時に詠まれたものと思われる。もちろん、西行の「何事のおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」(『西行法師家集』)が踏まえられている。

 神域から溢れる清気を花の香に重ねながら、そこに分別や名前(言葉)を超えた万物の化育を司る神の恩沢を感じ取っている。西行の歌がやや観念的なのに対して、芭蕉の句では、「花」の香に「物の微」を求めて「情の誠」に通じるものがあり、そこに神の気吹も伝わってくる。まさに「造化随順」による詩境がそこに立ち現れていると言えよう。

 ちなみに、嗅覚からの電気信号のみは、視覚、聴覚、触覚、味覚と異なり、知覚情報を分析統合する視床を介さずに、ほぼダイレクトに大脳皮質嗅覚野(眼窩前頭皮質)に伝わるため、深く鮮明な印象が残りやすいと考えられている。古語における「匂ひ」が内部から輝き出るような美質や魅力という意味で用いられていたことも、そうした嗅覚の特殊性と関係しているのではないだろうか。さらに言えば、それが神気の感得にも重要な働きを担っているのかもしれない。

 

季語 : 花(春) 出典 : 『笈の小文』(『杉風宛書簡』『菊のちり』『真蹟集覧』)

 

For no reason
feel the wonders of nature by scents
of unknown blossoms

 

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伊勢神宮外宮・月夜見宮