俳句・短歌ランキング
にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
にほんブログ村

芭蕉百句 100 haikus of Basho

芭蕉百句の評釈と英訳 100 haikus of Basho selected and translated into English by Takatoshi Goto  © 2021 Takatoshi Goto

明ぼのやしら魚しろきこと一寸

あけぼのやしらうをしろきこといつすん

 

 貞享元年(1684)10月、伊勢桑名での作。この句の前文に「草の枕に寝あきて、まだほのぐらきうちに濱の方に出て」(『甲子吟行』)とあり、各務支考の『笈日記』には、「おなじ比にや、浜の地蔵に詣して」とある。浜の地蔵は、谷木因と逍遙した桑名東部の揖斐川河口のほとりにあったが、伊勢湾台風にて水中に没してしまい、現在は、少し内陸に再建された地蔵堂(竜福寺)に、白魚塚として芭蕉句碑が建てられている。白魚は江戸時代から桑名の名産であったらしい。

 初案の上五は「雪薄し」だったが、「此五文字いと口おし」(『笈日記』)、また、服部土芳『三冊子』にも「この句、はじめ、雪薄し、と五文字あるよし、無念の事也といへり」と記されており、のちに「明ぼのや」に改められたらしい。これによって、白魚の白さに句の焦点が定まり、冷たい汽水にあっても活きの良い姿、さらには透き通る小さな体に躍動する命の神秘にも迫る句となった。また、曙のほの暗さ、あるいは曙光の赤さが、白魚の白さを際立たせると共に、これからさらに昇りゆく、生命の根源たる日の光に映える白魚の煌めきもまた想像されてさらに深い感銘がもたらされよう。ちなみに、山本健吉がこの句を評して「紀行中の句の白眉である」(『芭蕉全発句』)と述べたのも大いに肯ける。

 

季語 : しら魚(春) 但し、桑名の近辺では白魚を「冬一寸春二寸」と呼ぶことから、掲句の場合は冬の季物と取って良いだろう。もっとも、江戸時代には、白魚そのものが冬の季物と見なされていたとも言われている。
出典 : 『甲子吟行

 

Breaking dawn —
the clear white of ice fishes
just about one inch

 

f:id:basho100:20210203143829j:plain

曙の海