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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。© 2021 Takatoshi Goto

奈良七重七堂伽藍八重ざくら


ならななへしちだうがらんやえざくら

 

 貞享元年(1684)の作(推定)。まず「奈良七重」という上五は、奈良のnaと七重のnaが頭韻を踏みながら、七代の天皇が帝都とした奈良の古い歴史に思いが致されている。次の「七堂伽藍」は成句であり、南都六宗では、金堂、塔、講堂、鐘楼、経蔵、食堂(または中門)、僧坊が揃った寺院を指すが、これは眼前の光景であると共に、数字的な意味からも上五の「七」に連なっている。さらに、「七堂伽藍」の「七」は「八重ざくら」の「八」へと漸増しつつ、その花によって荘厳される仏都の香しさまで感じられる。

 もっとも、伊勢大輔の「いにしへのならのみやこの八重桜けふ九重ににほひぬる哉」(『詞花和歌集』仁平元年(1151年)完成)や貞如の「名所や奈良は七堂八重桜」(『続山の井』寛文7年(1667)刊)などの先蹤に鑑みれば、上述した詩境は芭蕉独自のものと言い難いのは事実である。

 しかし、芭蕉の句では、上五・中七における音韻から意味へと連らなる流麗な詩興のなかに、古き仏都である奈良における壮大な時空がうまく詠み込まれていると共に、下五の「八重ざくら」によって、それら全てが現実の場景として包摂されつつも、人為と天為が詩的昇華された極楽にも似た至境を感じさせるものがある。

 

季語 : 八重ざくら(春) 出典 : 『泊船集』(『宇陀法師』)

 

Seven Nara dynasties
seven-structured temple compound
eight-petaled cherries 

 

Nara : Japan's ancient Imperial capital

seven structure :  A kon-do Hall(main hall or golden hall), a pagoda, a lecture hall, a belfry, a kyozo (scriptural depository, library), a sobo (monks' living quarters) and a refectory (or midle gate) in the general remarks

eight-petaled cherries : Equivalent to double cherry blossoms

 

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常楽会