ばせうのわきしてたらひにあめをきくよかな
延宝9年(1681)秋、深川芭蕉庵での作。前書きに「茅舎ノ感」(『武蔵曲』)あるいは、「老杜茅舎破風の歌あり、坡翁ふたゝび此句を侘て屋漏の句作る。」(『禹柳伊勢紀行』)とある。
芭蕉の草庵には、同年春に門人・李下から貰った芭蕉が植えてあった。野分の風雨によってその葉がはためく音や、雨漏りを受ける盥に発する滴りの音が聞こえてくる。杜甫や蘇東坡が詠んだ詩句(「牀牀屋漏りて乾ける処無し」「牀牀漏を避く幽人の屋」)に思いを馳せながら、独り寝をする「侘び」の詩境を詠んだ句。盥に受ける水滴の音に俳味と実感がよく伝わってくる。さらには、天地人の機微を詠み込んでいるところに「天人合一」や「造化随順」といった蕉風俳諧の要諦も覗われる。
季語 : 野分(秋) 出典 : 『武蔵曲』(『泊船集』『芭蕉盥』)
Stormy autumn night —
the sounds of beating banana leaves
and leaking into a tub

